再帰三人称の分類について
上の記事で再帰三人称の分類について少し触れましたが、締め切り前に急いで考えた分類なので結構詰めが甘いところがありました。今回は、この記事でもう少し整理した分類について紹介します。
新たな分類
大きく分けて記号表現としての再帰三人称と記号内容としての再帰三人称があります。
記号表現としての再帰三人称
記号表現としての再帰三人称は、例えばひよたんと呼ばれている人物が以下のような文章を発した場合です:
- そろそろ「ひよたん」っていう一人称やめたいんだよね
- 「ひよたん」って客席にいっぱい見えて嬉しかった
- おはひよたんー!(挨拶として)
これは言い換えれば、ある人物を指す記号そのものへの言及をその人物本人がしている場合です。これは一応定義上再帰三人称ではありますが、この協会があまり興味を持っているタイプではありません。
記号内容としての再帰三人称
記号内容としての再帰三人称は、基本的に記号内容についての言及とともに現れるもので、さらに「引用」と「叙述」に分けることができます。それぞれ説明していきます。
引用
これは他者の発言を引用する際に、その中に自分の名前が含まれているような場合で、例としては
- なっちょさんが「ひよたんいい匂いする」って言ってたの!
- ひよたんも寂しいんだなって思っていただけるとありがたいです
などが挙げられます。このタイプに対しても本協会は興味を持っていません。一般の人も使うことが多々あり、保護する必要がないからです。
叙述
これは基本的には上の「引用」以外の用法だと思っていただければいいと思います。以下に例を挙げます。全部「ひよたん」と呼ばれている人の発話だと思ってください。
- ひよたんは今日ね宝塚に行ってきたの!
- ひよたん今日元気ないみたいです
- ひよたんたちの喧嘩ってさ黙るよね
- ひよたんポーズ作ったんだ!
- 今後ともひよたんをよろしくお願いします
- (なにか写真を見てコメント) いつもよりテンションが低いひよたんです
- (なにか写真を見てコメント) これはいつの日かのぶりっ子ひよたん!
- やっほー!ひよたんでーす!
- はじめまして、ひよたんです!
以上のように、叙述の再帰三人称には、1-5のように文の主語や修飾語として使われるパターンや、6-7のように修飾されたりするパターン、そして8-9のように自分の名前を宣言するパターンなどが見られます。
そして、それぞれの用法に関して、それがどのくらい主観的かというパラメータがあります。文脈によるとは思いますが、1が日向坂46メッセージというアプリでのファンへのメッセージであるとすると、かなり主観的な再帰三人称ですし、3をSHOWROOMでの他のメンバーとの配信での発話であるとすると、これも主観的です。
一方で2や5は、あたかも他人のことを述べているように感じているので主観性が少ない再帰三人称ですね。6や7なども写真を見て、客観的に自分のことを説明している文章なので、客観性があります。
4に関しては、少し判定が難しいですが、「ひよたんポーズ」という単語をこの文脈(メッセージアプリでのファンへの発言)から切り離しても「ひよたんポーズ」を知っている人であれば、その意味内容にほとんど変化がないので、客観的だと思います。
8や9などの自己紹介や自分の名前の宣言などは、客観的に自分というエンティティの名称を導入したり改めて宣言したりしているので、客観性のある再帰三人称だと思います。
一応、上に挙げた例を主観的か客観的か分類したつもりですが、一概に一方に分類できるものでもないです。どちらともつかないものもあれば、どちらでも解釈できるものもあるかもしれません。あと主観的か客観的かの違いは白黒ではなく、グラデーションになっている気がします。
最後に
本協会では基本的に、主観的な叙述再帰三人称を保護する予定です。このタイプの再帰三人称は、使う人物がかなり少ないものの、使う人はかなりの頻度で使います。つまりこのタイプは、tf-idf(ある文書内での頻度と、文書間でのレア度の積)が高いです。本協会はtf-idfが高い再帰三人称を保護していきます。
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