英訳&解釈『月と星が踊るMidnight』日向坂46 【坂道で学ぶ英語と康】
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英訳『月と星が踊るMidnight』(作詞:秋元康, 作曲:Masafumi Okamoto)
0:16
At midnight, when the moon and the stars are dancing,
Over the fence, we got back to the schoolyard.
Trapped in the old school building, we would scream
"Let us out of here"
And try to smash the windows again and again.
0:50
Now we are bothered about our futures.
We must change ourselves.
All adults, who we resisted, also once hated this world.
But at some point,
They got used to living in this world with their eyes closed.
1:04
How could we possibly forget what we had despised so much for ages?
Can we still make it in time?
We're going to do only what we really want to.
Don't want to be just understanding people.
Don't want to be swayed by others.
We don't give up yet, no matter what they say to us.
Don't be afraid of failure.
1:36
Lying stretched out on the ground,
We kept waiting for dawn.
We would think about how many more times we should run around the ground to get their "Good job".
Under the flaming sun, sweating was nothing but unreasonable to us.
2:10
We've realized how insignificant our existences are.
Can't see our futures at all.
It seems that we are wasting our meaningless lives.
That makes us rush.
2:24
But anyone can be born again.
The dreams we had at that time are still reachable.
It's never too late to make up our minds.
2:38
Getting back here, we've realized that we can do anything.
Fear for the future makes possibilities.
2:50
Running up the emergency stair, we went to the rooftop.
We saw a stunning sunrise, shivering in a cold wind.
"How beautiful our world is..."
3:19
Now we are bothered about our futures.
We must change ourselves.
All adults, who we resisted, also once hated this world.
But at some point,
They got used to living in this world with their eyes closed.
3:36
How could we possibly forget what we had despised so much for ages?
Can we still make it in time?
We're going to do only what we really want to.
Don't want to be just understanding people.
Don't want to be swayed by others.
We don't give up yet, no matter what they say to us.
Don't be afraid of failure.
4:08
Worry yourself and yet live strong.
解釈
この曲は、転換期にある日向坂の葛藤と新たなる始まりを、将来への不安を抱く大学生を通して表していると解釈することができる。 まず構文論的に歌詞世界の情景を明らかにした上で、次に意味論的に現実世界との結びつきを明らかにする。
構文論
月と星が踊るMidnight フェンスを超えて 舞い戻った校庭 古い校舎の中 閉じ込められ叫んでいた ここから出してくれとガラス窓を叩き 割ろうとした日々よ
「月と星が踊る」とは、どういうことなのか。これはその後に述べられる、学校というものに対して「僕たち」が抱く感情を反映したものだと考えられる。「舞い戻った校庭」とあるので、学校に返ることに少しワクワクした気持ちがあることが読み取れるが、「古い校舎の中・・・(中略)・・・割ろうとした日々よ」は、学校に対する嫌悪や反抗を表している。つまり、学校に「舞い戻った」ことによる高揚感と拒否感によって、「僕たち」の体に震えが生じ、月と星が踊っているように見えているということだろう。
また、「割ろうとした日々よ」と過去を回想していることから、「僕たち」はすでにこの学校を卒業していることが分かる。
A・Bメロについてまとめるとこうなる: 大学生になった「僕」は、日付が変わる夜の12時(Midnight)に、高校時代の仲間と集まり、少しワクワクしながらこっそり母校に忍び込んだ。校庭に出ると、当時学校に抱いていた反抗心を思い出した。ワクワクと反抗心を持って見上げた月と星は、踊っているよう見えた。
今 僕たちは僕たちは憂う このままじゃこのままじゃダメだ 刃向かった 刃向かった大人 いつしか 嫌だった嫌だった世界 目を瞑り生きることに 抵抗なくなった
校庭にいる「僕たち」は、自分たちの「過去」を振り返った後、自分たちの「現在」そして「未来」への不安を抱く。かつて「刃向かった大人」みたいにはなりたくないと思いながら。
リズムの関係上、助詞が省略されている部分もあるので、「刃向かった・・・」から補って説明すると、「高校時代、僕たちが刃向かった大人も、かつてはこの世界に嫌悪を示していた。しかしいつしか彼らはこの世界で目を瞑って生きることに抵抗がなくなった」となる。
軽蔑していたものは何だ? 間に合うか 間に合うか これから ホントにやりたいこと それだけをやろう 物分りよくなって 流されたくはない 誰に何言われても 僕たちはまだまだ諦めない 過ちを恐れるな
「軽蔑していたものは何だ?」は、軽蔑していたものがわからなくなったわけではなく、軽蔑していたものを再確認している。それは、「物分りよくなって」周りに「流され」、「過ちを恐れ」る大人たちなのだろう。そして、かつて大人たちからこうしなさいああしなさいと言われ、「ホントにやりたいこと」をできなかった「僕たち」は、大人へ反抗するだけでなく、「まだまだ諦め」ていない夢を叶える決意をする。
グラウンドに大の字になって 寝転びながら 夜明けを待ち続けた あと何周走れば よくやったと言われるのか? 炎天下のその下で 汗を流すのは 理不尽でしかなかった
そして場面はグラウンドに移る。グラウンドに寝転びながら「僕たち」は、運動部だった過去を思い出し、学校という場所の理不尽さを嘆く。
ああ 僕たちは僕たちは想う ちっぽけな ちっぽけな自分 見えないよ 見えないよ 未来 何にも意味のない意味のない命 無駄遣いしているようで 焦ってしまうんだ
グラウンドに仰向けになって夜空を眺めたときに、改めて宇宙の広さを実感する。宇宙と自分とを比べ、自分の「ちっぽけ」さ、自分の命の無意味さを思い知る。しかしながらその命の当事者はやはり等身大の「僕たち」で、「無駄遣い」をすることに焦りを感じている。 また、地球に届いている月や星の光はすべて過去の光であることを昔学校で習ったことを思い出し、皮肉なことに、ここでもまた学校という存在が僕たちを絶望させていることに気づく。
でも もう一度 もう一度 もしも 生まれ変われるはずだよ 誰も・・・ あの頃に あの頃に見た夢 今でも 手を伸ばせば届くはず きっと 決心することに 遅すぎることはない ここに来て気づいたよ 僕たちはなんだってできるんだ 憂いとは、可能性
「もしも」がここに挿入されるのが、一見、文法的におかしいようにも思えるが、これは確信度がこの瞬間にも変わっていることを示している。サビ前半は、かなりネガティブなことを言っているが、後半に行くにつれポジティブな言葉に変わっている。ゆえにこの「もしも」は、「もしも生まれ変われたら・・・いや、誰しも生まれ変われるはずだよ」という願望から確信に変わる途中の「もしも」だろう。
「今でも」とあるので、「あの頃」の時点で夢に手が届かなかったわけではないのだろう。ただそれに手を伸ばす決心がつかなかった。しかし学校に来たことで、かつて感じていた全能感を思い出し、将来を憂うことは、別に悪いことではなく、将来の可能性を作ることに他ならないと前向きに捉えはじめる。
非常階段 上って 屋上に出てみた ハッとするほど綺麗な 朝焼けを見たよ 僕たちの世界は なんて美しいんだ 震える風の中で・・・
「非常階段」なのは、鍵を持っていない「僕たち」の、屋上への唯一のアクセス方法だからだ。
屋上にて、「嫌だった世界」とは違う「僕たちの世界」の美しさに震える。「朝焼け」であることから、なにか新たなる「始まり」を予感させる。
ここまでで歌詞世界の情景がだいぶ明らかになったと思う。まず夢を捨て社会に染まった大人とそれに反抗する子供という対比があり、現在の自分たちがその境界面上に存在することを自覚する。「僕たち」は将来を憂うが、夜空を眺めているうちに、「憂いとは、可能性」であることに気づき、「朝焼け」に希望を感じる。
意味論
この歌詞世界に、今度は日向坂46を当てはめて考えていきたい。
日向坂46の前身であるけやき坂46は、欅坂46の妹分として誕生した。そしてその3年後、「欅」という名前から独立し、「日向坂46」としてデビューした。このデビューまでの3年間は、彼女らにとっては歌詞世界の学校と同じように、成長する上で大切で、今でも楽しかったと思い出せる期間であると同時に、そこから脱出したいと思うほどの理不尽を度々感じることもあった期間であった。
したがってここでは、「学校」=「けやき坂」である。「刃向かった大人」や「ガラス窓を叩き割ろうとした日々よ」は、それ自体で「欅坂」の表象となっている。
日向坂46としてデビューした彼女らは、順分満帆と言っていいほどの快進撃を成し遂げ、1年目で紅白出場、2年目にして東京ドームライブ(コロナの影響で4年目に実施した)を達成した。この1stシングルから7thシングルの期間が、歌詞世界における学校卒業から学校に夜中戻ってくるまでの期間に対応する。
そして現在の日向坂46に焦点が当たる。1stシングル『キュン』から7thシングルの『僕なんか』まで、すべて恋愛系の表題曲だった日向坂は、今回初めて恋愛系ではない表題曲を出した。まるで「このままじゃだめだ」と言わんばかりに。
『3年目のデビュー』にて、にぶちゃん(丹生明里)が初めて青春の馬を振り付けの方々が踊るのを見た時に、日向坂の行くべき道が見えたと言っていたのを思い出す。にぶちゃんは、頑張る人たちの背中をぐっと押してあげられるような、そんな存在に日向坂としてなりたいと思っていたのかもしれない。しかしその後に楽曲としてもらったのは『アザトカワイイ』だった。『アザトカワイイ』それ自体に罪はないが、果たしてメンバーたちの「ホントにやりたいこと」だったのか疑問は残る。
もちろん、『何度でも何度でも』などの応援曲も6thシングルには収録されているので(歌詞も青春の馬にかなり似ている)、少なからず運営からの歩み寄りがあったのかもしれない。
そのような背景があった上で、この『月と星が踊るMidnight』だ。センターである齊藤京子もこの曲について次のように述べている:
思い悩んで思い悩んでも諦めずに強く生きよう、過ちを恐れず頑張ろうと思える、そんな応援してくれる曲です。
応援することが日向坂のこれからの路線だと言いたいわけではない。ひらがな時代の彼女たちのパフォーマンスを見れば、恋愛系に限らず、「なんだってできる」ということが容易に分かる。『月と星が踊るMidnight』は、日向坂が今、あらゆる可能性に憂えていることをこの楽曲によって表現しながらも、同時にまさにこの楽曲によって新たな一つの道を提示していると言ったほうがよいだろう。
渡邉美穂、宮田愛萌といった㋳の権化のようなメンバーの卒業、そして12人の4期生の加入。間違いなく日向坂は一つの時代の終わりを迎えようとしている。そして4期生という「朝焼け」を見て、新しく来る「僕たちの世界」の美しさに震えている。そんな転換期にいる日向坂を描いた作品だと私は解釈する。
コメント
ああああああ涙腺崩壊だよこんなの。もうずっと泣いている。最推しのきょんこがセンターであるということを除いて考えても最高だよこの曲。きょんこのダンス・表情・歌唱による表現力が爆発しているせいで、胸の奥底から打ち震わされているかのような心地になる。ライブで見れて本当に嬉しかった。
タイトルからは想像できない曲調だった。『星と月が踊るMidnight』だけ聞くとメルヘンな感じに聞こえるけど、実際はすさまじく力強かった。特にサビの畳み掛けが本当に聴いてて気持ちいい。 解釈したあとで聞くと、力強さの裏に将来を憂う焦燥感みたいなものも感じる。特にラスサビに入る前の音とか、サビの早口とか。 明日からまたYoutube Musicに頼る日々だ。
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