女性に生まれた世界線の自分へ
今、あなたがこれを読んでいるということは、この記事がなにかの手違いで世界線を渡って、あなたのいる世界線に届いているということだ。こちらの世界線では、あなたは男性に生まれた。女性に生まれたあなたに、男性に生まれたあなたからお願いがある。
日向坂46に応募してくれ!!!!頼む!!
3月7日の正午から日向坂46というアイドルの新メンバーの募集が開始した。そっちの世界線でもおそらく同じ日時に開始されているだろう。
そもそも日向坂46というアイドルを知っているだろうか?どんな世界線の「私」も日向坂46に出会っていると信じているが、出会っていない場合は説明が必要だろう。
日向坂46はもともと「けやき坂46」という名前だった。欅坂46というアイドルグループに家庭の事情で遅れて加入した長濱ねるという子がおり、その子に対して用意されたアンダーグループ的存在が、「けやき坂46」だった。
そしてその長濱ねるという子の仲間として加入したのが、今の日向坂46の一期生である。
最初、けやき坂46は欅坂46の影に隠れ、人気はあまりなかった。というのも欅坂46のデビューシングル『サイレントマジョリティー』が爆発的ヒットを達成したからだ。欅坂46と合同で握手会を開催することも多く、ガラガラの握手レーンを前に自分たちの人気の無さをまざまざと見せつけられることもあった。
自分たちの存在意義がわからなくなるメンバーも多い中、1stワンマンライブ、全国ツアーを駆け抜け、二期生の加入や、ねるちゃんのけやき坂離脱など、度重なる試練に立ち向かいながら、そのなかで自分たちの個性である「ハッピーオーラ」を自分たちの手で確立していった。
そして欅坂46のセンター平手友梨奈の怪我によって、急遽けやき坂46は、欅坂が出演する予定だった武道館3Days公演を任されることになった。武道館3Daysという彼女たちにとっては異例のライブに、不安を抱えるメンバーもいたが、短いリハーサル期間の中、血の滲むような練習を経て、最後にはメンバーの士気も最高潮に達していた。公演初日から最終日にかけて、彼女たちは武道館という場に、ひらがならしいハッピーオーラ満載のステージを作り上げ、3万人もの観客を満足させた。当初、欅坂46のアンダーグループとして発足したけやき坂46であったが、武道館3Daysというライブを大成功させるぐらい立派なグループに成長したのだ。
その武道館ライブの最後に、初の単独アルバムの発売が発表された。けやき坂46はアンダーグループという存在から脱却しつつあった。アルバムの全国ツアーを経て、2019年2月、「ひらながからのおしらせ」というSHOWROOMの最後に、彼女たちに手紙が渡される。手紙の指示通り、用意されたVTRを見ると、そこには「改名」の文字。そして画面には、 「日向坂46」
やっと自分たちのグループが名実ともに欅坂46から独立したグループになることを喜ぶメンバーもいれば、ひらがなけやきとしてやってきた3年間が消えてしまうのではないかという名残惜しさを感じるメンバーもいた。
ひらがなけやきへの思いが断ち切れないメンバーのために、2019年3月5日、日向坂46のデビューカウントダウンライブにおいて、急遽ひらがなけやきのラストライブが用意された。メンバーは今までのことに思いを馳せ涙を流しながら、それでも笑顔でパフォーマンスをし、ひらがなけやきにさよならを告げた。そして日向坂46としての1歩を、デビューシングルの表題曲『キュン』にて踏み出した。 デビュー後も日向坂46は飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を獲得し、2020年の12月には東京ドームライブが予定されていた。ただコロナの影響で東京ドームライブは延期に延期を重ね、今年の3月にやっと開催できることになった。
日向坂46の歴史をさも古参かのようにつらつらと述べてきたが、実を言うと私は日向坂46の3rdシングルでファンになった新参者だ。なのであまり実感を持って日向坂の過去について書くことはできない。それは、別の世界線の古参の「私」がおそらく書いてくれると思うので任せる。 実際にその時期に推していたわけではないのに、この文章を書いている最中も、彼女たちのことを考えると涙が溢れてきた。それぐらい日向坂には人の心を揺さぶる何かがある。私の拙い文章では、日向坂の魅力を伝えきることができないのが本当にもどかしい。もっと詳しく知るには、日向坂46の歴史が書かれた『日向坂46ストーリー』や、日向坂46のドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』を見るといいだろう。『3年目のデビュー』は今ならAmazon Prime Videoで見れる。 日向坂に出会ってからというもの、私の人生は変わった。それまでは、こんなにを何かを強烈に好きになったことも、こんなに何かに感動して泣くこともなかった。大学受験や進振りなど、日向坂がいなかったら乗り越えられなかった壁がいくつもある。
これだけ人に生きる希望と感動を与え、人を笑顔にする日向坂46に、私は入りたいとすら思った。しかし私はどうしようもなく男性である。そこで今回、そっちの世界線の「私」に頼むことになった。
そっちの「私」がどのくらい可愛くて、どのくらいアイドルになりたいか、私は知らないし知り得ない。
でも挑戦してみてほしい。たとえそれが実を結ばなくても、それが男性に生まれた「私」たち共通の夢であることに変わりはない。どうか後生だから、日向坂46に応募してほしい。
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